妊娠中の歯科治療について
2017年08月18日
妊娠中は歯科治療が出来ないのではないかと心配している方も多いのではないでしょうか?麻酔やレントゲンなど胎児への影響も心配ですよね。しかし、実は妊娠中でもほとんどの歯科治療は出来きます。むしろ出産後までそのままにしておくと、お腹のお子さんにとって深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。今回は妊娠中の歯科治療について詳しくお伝えしていきます。是非参考にしてください。
①妊娠期別に見た歯科治療
妊娠中は、基本的には治療を行えない時期はありませんが、時期によっては治療を行いやすい時期があります。この章では妊娠中の歯科治療について時期ごとに分けて解説していきます。
◎妊娠初期(1~4ヶ月ころ)
この時期は、つわりがひどく流産もしやすい時期なので、長時間の治療や、緊張しやすい治療は避けたほうが無難です。ですが、痛みを我慢しすぎるのも(ストレスをためすぎるので)お腹の赤ちゃんにとってはよろしくありません。痛みがひどい場合は、医師と相談のうえ応急処置程度でいいので治療をしてもらい、安定期に入ってから再開しましょう。
◎妊娠中期(5~8ヶ月ころ~)
この時期になると、母体も胎児も安定し、もっとも治療に適した時期になります。この時期に積極的に必要な治療を受けるようにしましょう。
体に特別な問題がなければほとんどの治療が問題なく受けられます。
ただし、親知らずの抜歯やインプラント治療など、いわゆる口腔外科的な処置は避けたほうがいいでしょう。もし妊娠前に親知らずが腫れそうな状態にある場合は、早期に抜いてしまうのも選択肢の一つです。
◎妊娠後期(9ヶ月ころ~)
このころになると、治療台を倒したり起こしたりすることで貧血を起こす場合もあります。また、治療時のストレスにより早産のリスクをともなうため治療に適した時期ではありません。この時期の治療はなるべく避け、応急処置にとどめておく方がいいでしょう。
➁妊娠中に起こりやすいお口のトラブルと胎児への影響
妊婦さんは妊娠前と比べて体の中(ホルモンや免疫など)が変化しています。その影響でお口の中では今までなかったようなトラブルが起こり易い状態にあります。この章では妊娠中に起こり易いお口のトラブルについて説明いたします。
◎妊娠中は虫歯が出来やすくなります
妊娠すると唾液の量が減ったり、つわりで胃酸が上がってきたりしてお口の中が酸性に傾くため虫歯が出来やすい環境になります。また、つわりや食生活の変化によって歯磨きを行いにくいことも多く、出産後気づいたら虫歯がたくさんできてしまったということがあります。
◎妊娠中は歯茎が腫れやすく、歯周病になりやすい
妊娠中のトラブルで一番多いのが歯茎の腫れです。妊婦さんの半数以上にみられます。妊娠すると女性ホルモンが増えるため、それを好物とする歯周病の原因菌が増加することで歯茎の炎症が起こり易くなります。歯周病は20代より30代後半を過ぎると、急激に重症化してくる病気です。近年、30代で出産される妊婦さんが増えていますので特に注意が必要です。
◎重度の歯周病は早産の原因になります。
歯周病が重症化すると、歯茎で起こった炎症性の物質が血液を介して全身に広がります。そうすると子宮を収縮する物質の分泌がうながされ、本来の出産予定日よりも前に子宮収縮を引き起こしてしまい早産になると言われています。重度の歯周病の人が早産になるリスクは、歯周病でない人に比べて7~8倍とも言われています。さらにタバコやアルコールなども摂取している人は、さらにリスクが高まります。
◎こうならないためには・・・
妊娠中はお口のトラブルが起きやすいと説明してきましたが、それを防ぐには歯医者さんでの検診とクリーニングが非常に重要です。特に歯周病に対してのケアが大事ですので、こまめなクリーニングをお薦めします。
③歯科治療が胎児に及ぼす影響
虫歯や歯周病などで歯医者で治療を受ける必要ができたとき、治療で使用する麻酔薬やレントゲン、お薬は胎児に対する影響はあるのか気になりますよね?この章では歯科治療が胎児に与える影響について解説していきます。
◎歯科で使用する麻酔薬について
一般的な虫歯治療に使われる局所麻酔薬(キシロカイン)は、胎児への影響がほとんどなく、使われる液量も母体や胎児に悪影響を及ぼすほどではありません。むしろ、麻酔をせず痛みに耐えているお母さんのストレスのほうが赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があります。ただし、以前麻酔でアレルギー反応が出たり気分が悪くなったりした方は、どんな軽症であっても必ず事前に歯科医師に申告しましょう。
◎レントゲン
歯医者で撮影するレントゲン(X線)は口の中に限定して照射されるため、腹部にはほとんど影響はありません。また、被曝する量も母体や胎児に影響を与える量ではありません。たばこ1本吸う方が何十倍もリスクがあると言われています。さらに撮影時には鉛でできた防御エプロンをお腹にかけるので、X線が直接赤ちゃんに被爆する心配はありません。ですから、リラックスして治療を受けてください。これは一部分の歯を撮影する場合も、お口全体を撮影する場合も同じです。なお、当院ではフィルムを使わないデジタルレントゲンを採用しているので、フィルムを使うレントゲンに比べて線量を1/10程度に減らすことができます。
◎お薬
結論から言いますと、妊娠中の投薬はないに越したことはありません。しかし、痛みが激しいなど、服薬しないことが逆に悪影響を及ぼしかねない場合には、必要最低限の鎮痛剤や抗生剤が出されます。もちろん妊娠中に服用しても安全性の高い薬が選択されますが、お薬が必要な状態にならないように、妊娠中は日ごろから歯に対してのケアをするようにしましょう。
④歯医者さんに行く際に気をつける注意点
◎母子手帳を持参する
母子手帳は歯医者さんに行くときに限らず普段から持ち歩くことをお薦めしますが、母子手帳に記されている情報は、歯科医師にとって重要です。忘れずに持参しましょう。
◎妊娠していることを伝える
妊娠する前から歯医者さんに通っていることがあると思います。そのようなときは妊娠が判った時点で、歯科医師にしっかりと伝えましょう。産婦人科医に注意を受けている事柄も忘れず伝えるようにしましょう。
◎痛みやトイレを我慢しない
妊娠中はどうしてもトイレが近くなります。それを我慢したり、また痛みを我慢したりするストレスは胎児にとっていいものではありません。そんな時は治療中でも遠慮せず歯科医師にその旨を伝えましょう。
まとめ
ここまで妊娠中のことを話してきましたが、普段から虫歯や歯周病は出来てから『治療』するのではなく、出来ないように『予防』することが大切です。妊娠前から定期的に検診&クリーニングを行い予防していれば、妊娠中でもトラブルが起こることが少ないです。しかし、妊娠してからでも早期にきちんと検診&クリーニングを行うことでトラブルの発生、重症化を防げます。
お母さんが『治療』&『予防』を行うことはおなかの赤ちゃんのためでもありますので、この記事を読んでいただいた妊婦の方はなるべく早めに対処することをお薦めします。
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